山田風太郎『青春探偵団』

読了。山風は小説上手いな、と再認識。プロットがよい。主人公達が高校生ということもあり、想定される読者層も低めと思われるのでユーモアミステリやら青春ミステリとして書かれたと思われる。設定が昭和30年代ということもあり、俺が体験していない時間。全く知らない時代で中途半端な古い時代設定でもないので当時の風俗*1がどうなっていたのかも分かるのでその辺も楽しい*2
6篇の短編が収まっており、それぞれ独立したお話。山風なので連作短編として期待してしまったりもしたのですが(『妖異金瓶梅』『明治断頭台』のような)。
物語というか小説というかフィクションというかノンフィクションというか、話を盛り上げるなり変化させるなりするには登場人物の誰かが「何かをしでかす」ということが重要。要はハプニング。触れてはいけない物に触れたり、やってはいけないことをやったり、その場を取り繕うために嘘を一つついたりすると物語が動き出す。山風はその動かし方が上手いのだな、と。伏線の張り方にしてもしかり。
ただ本書ではドタバタ喜劇的な要素が多く、ご都合主義的になってしまう点もあるのは少々残念。「特に名を秘す」で言うなれば、殺人現場に泥棒と居合わせるというくだり。現場に行く必要もさほどなかったようなとも思ったけど解決の糸口となる小道具を登場させなければならないし、短編のため紙幅の関係もあったのかあな、などと作品の外のことまで考えてしまうのはよくないかなとか思いつつ感想おしまい。
新刊書店だと今は忍法帖シリーズくらいしかお目にかかれないのが残念。光文社文庫で復刊シリーズやってたけど、光文社文庫の枠なんて大型書店とかにでもいかないと少なくて少なくて。

*1:エロではない意味の方ね。習俗とかだとニュアンス違うので適当な言葉が見つからない

*2:「舎監」「シスターボーイ」「グラマー・ガール」など